■講演 「四国(松山)におけるIP防災の試み」
愛媛大学 工学部教授 小林真也 氏
現状の防災通信システムの一層の有効運用を図るため、IP技術を用いて各機関の情報を共有し、災害時の効率的な復旧活動の実施を目指すIP防災について説明された。また、平成15年に愛媛県松山市において行われたIP防災の実証実験について講演された。
■質疑応答
Q1 実証実験を考えた場合には多数の協力者と費用が必要だと考えられるが、H15年度の参加者と費用について教えていただきたい。
A1 費用については参加各機関の持ち出しであって、事務局である四国総合通信局でも把握していないのが実態である。参加人数についても詳細は不明だが、各機関から数名の方が施設の設置・運営に参加していただき、WGメンバーとしては40名ほど含まれており、延べ100名ほどの参加があった。
Q2 このような多数の防災機関が協力した実験というのは珍しいと思うが、参加機関への呼びかけの苦労と要した時間について教えていただきたい。
A2 呼びかけについては四国総合通信局が中心に行っているが、過去数年にわたりテーマを変えながら実験を行っている実態であり、一から実験を行うというのとは状況が異なる。
Q3 避難場所での情報提供に対して、地域住民が要望する情報などはあったのか。
A3 今回の実験でその点に関する結果は落ちてしまっているが、2001年3月に発生した芸予地震において愛媛大学調査団が実施したアンケート調査結果では安否情報への要望が高く、被災者がいる場所において要求する内容が異なった。例えば、外出している方は自宅の状況について、自宅にいる方は外出している知人の状況など。
意外に、通信システムに対する要望が高かった。ライフラインとして電気・ガス・水道は従来から言われてきたが、電話がつながらないと情報が集まらないことから電話回線の回復への要求が高く、通信が途切れることに対しての不安感が高くなっている。
Q4 ソフト・ハードに関するツールが有効であることについては今回の実験で検証されたと思うが、実際対象とされている南海地震が発生した場合に松山市に今回のシステムを適用するとすれば、インフラの整備状況はまだ不十分ではないかと思う。今回の実証実験を受けて、インフラ整備に向けてどのような取り組みをしようと考えておられるのか。
A4 インフラ整備については正直まだまだである。防災だけではお金がつかない問題があることから、例えば無線LANを街に張り巡らせるとどのように日常的に使えるかなど、日常的に使えるシステムという話があって初めて整理ができる。この点が大きな課題であり、ご意見・アイデアがあれば、私としてもお伺いしたい。
今年度対象とする中山間地でも、無線を使ったネットワークで住民に日常的なサービスとしてどのようなものを提供するのかという話があってこそ、インフラの整備ができる。
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