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文部科学省科学技術振興調整費 重要課題解決型研究プロジェクト
「危機管理対応情報共有技術による減災対策」
第1回シンポジウム報告

開催日時:
 平成16年12月1日(水) 13:30〜17:20

開催会場:
 独立行政法人 科学技術振興機構東京本部 地下1階サイエンスホール

主催:
 文部科学省
  プロジェクト参加機関
(独)防災科学技術研究所、消防庁、(独)消防研究所、(独)建築研究所、(独)産業技術総合研究所、東京大学、工学院大学、電気通信大学、東京ガス(株)、東京電力(株)、(株)東急総合研究所、三菱重工(株)       

参加機関代表挨拶
防災科学研究所 川崎ラボラトリー所長   後藤洋三 氏

 本プロジェクトの基本方針(国産技術で安く、普遍的な時空間座標による情報共有、多様な情報通信への対応、公開型のデータ構造とアプリケーションインターフェース、ソースコードの公開、大大特(大都市大震災軽減化特別プロジェクト)シミュレータの有効活用)とともに、具体的な目標として、県レベルから市町村レベル、コミュニティー、地域住民に至るまで活用される情報共有プラットフォームの実現を目指す。本シンポジウムの趣旨としては、プロジェクト参加メンバーも含め、情報共有に関する世の中の動き・技術的動向を勉強する場と考えている。

後藤洋三氏

■講演 「情報共有とグリッドコンピューティング」
  慶応義塾大学 総合政策学部教授   福井弘道 氏

 住民、企業、NGOなどが、国土や地域・環境の問題、それらに付随する行政施策・サービスに関する情報を共有し創発しあうための枠組みが提示された。また、仮想空間におけるコミュニケーションの場としてのGI(ジオインフォマティクス)やグリッドコンピューティングの活用について、御自身の研究成果を交えて説明された。さらに、より大きな情報コミュニティーの場としてデジタルアジアを提唱された。

■質疑応答

Q1 今回の中越地震の中で、通信インフラ被害・停電により情報・データ収集が非常困難であったという話を聞いた。我々のプロジェクトにおいて防災情報システムを開発する中で、通信インフラが被害を受けた場合の通信手段として、グリッドコンピューティングの中でどのような通信手段を介して情報共有をすればいいとお考えでしょうか。

A1 災害時の通信インフラとしては、衛星通信が非常に重要になってくる。通信・情報共有するためのインターネット等の環境構築は、これから投資すべき社会インフラとして非常に重要である。これらに対してインフラとして投資がなされないとなると非常に難しいことになるので、今後の社会基盤インフラの投資の方向性として非常に重要な視点となる。

Q2 今回紹介していただいたシステムはWEBベースであったが、災害時にインフラ被害を受けた場合の現地の被災者への情報基盤の維持に対して何かお考えがあれば教えていただきたい。

A2 阪神・淡路大震災の場合の大阪や新潟県中越地震の場合の東京などのように、近接に大消費地があるにもかかわらず被災地に対して物資が届かない実態に対してきちんと検討する必要がある。被災者に対して最終的に提供するサービスに関して、これまで事前のシミュレーションとシナリオの作成があまりにもいい加減であった。備蓄も含めて大消費地で災害が起きた場合にカバーする政策目標について議論をし、投資すべきところには徹底的に投資すべきという考え方がないことが一番の大きな問題である。

福井弘道氏

■講演 「四国(松山)におけるIP防災の試み」
  愛媛大学 工学部教授   小林真也 氏

 現状の防災通信システムの一層の有効運用を図るため、IP技術を用いて各機関の情報を共有し、災害時の効率的な復旧活動の実施を目指すIP防災について説明された。また、平成15年に愛媛県松山市において行われたIP防災の実証実験について講演された。

■質疑応答

Q1 実証実験を考えた場合には多数の協力者と費用が必要だと考えられるが、H15年度の参加者と費用について教えていただきたい。

A1 費用については参加各機関の持ち出しであって、事務局である四国総合通信局でも把握していないのが実態である。参加人数についても詳細は不明だが、各機関から数名の方が施設の設置・運営に参加していただき、WGメンバーとしては40名ほど含まれており、延べ100名ほどの参加があった。

Q2 このような多数の防災機関が協力した実験というのは珍しいと思うが、参加機関への呼びかけの苦労と要した時間について教えていただきたい。

A2 呼びかけについては四国総合通信局が中心に行っているが、過去数年にわたりテーマを変えながら実験を行っている実態であり、一から実験を行うというのとは状況が異なる。

Q3 避難場所での情報提供に対して、地域住民が要望する情報などはあったのか。

A3 今回の実験でその点に関する結果は落ちてしまっているが、2001年3月に発生した芸予地震において愛媛大学調査団が実施したアンケート調査結果では安否情報への要望が高く、被災者がいる場所において要求する内容が異なった。例えば、外出している方は自宅の状況について、自宅にいる方は外出している知人の状況など。
意外に、通信システムに対する要望が高かった。ライフラインとして電気・ガス・水道は従来から言われてきたが、電話がつながらないと情報が集まらないことから電話回線の回復への要求が高く、通信が途切れることに対しての不安感が高くなっている。

Q4 ソフト・ハードに関するツールが有効であることについては今回の実験で検証されたと思うが、実際対象とされている南海地震が発生した場合に松山市に今回のシステムを適用するとすれば、インフラの整備状況はまだ不十分ではないかと思う。今回の実証実験を受けて、インフラ整備に向けてどのような取り組みをしようと考えておられるのか。

A4 インフラ整備については正直まだまだである。防災だけではお金がつかない問題があることから、例えば無線LANを街に張り巡らせるとどのように日常的に使えるかなど、日常的に使えるシステムという話があって初めて整理ができる。この点が大きな課題であり、ご意見・アイデアがあれば、私としてもお伺いしたい。
今年度対象とする中山間地でも、無線を使ったネットワークで住民に日常的なサービスとしてどのようなものを提供するのかという話があってこそ、インフラの整備ができる。

小林真也氏

■講演 「防災情報共有プラットフォームの構築」
  内閣府 地震・火山対策担当参事官付参事官補佐   井上隆司 氏 (代理講演)

 政府におけるIT化への取り組み「e-Japan戦略」の概要と、その中の行政情報化に位置づけられる防災分野の情報化について説明された。また、政府としての防災情報共有プラットフォームの検討状況と今後のスケジュール等について講演された。

■質疑応答

Q1 対象とされている災害の範囲はどのようにお考えなのか。

A1 地震や台風等の水害、火山などの自然災害を考えている。

井上隆司氏

■講演 「東京都防災情報システム」
  東京都 総務局総合防災部防災通信課長   林寮一 氏

 東京都の防災情報システムについて、その構成と機能について講演された。さらに、整備中あるいは検討中の情報伝達手段として、東京都職員の携帯電話による画像・安否・参集情報のやりとりや、インフラ事業者からの被災情報の活用などについて説明がなされた。

■質疑応答

Q1 先ほどの小林先生の講演にあった「災害指令車」のようなものは東京都でも用意されているのか。

A1 区市町村の場合は災害対策現地本部を現地につけるので、災害対策指令車という形ではないが、メディアとしてFAX・災害情報システム・電話機能・静止画通信機能などを装備した市区町村の防災センターと同じ機能の車が2台、東京都庁と立川地域防災センターに各1台あり、例えば区市町村の建物がだめになった場合に現場に持っていって、現地災害対策本部の代わりとすることができる。

Q2 震度計ネットワークについて、お台場の付近には震度計がほとんど設置されていないようだが大丈夫なのか。

A2 震度計は区役所・市役所に設置していることから、臨海部には設置していない状況である。設置主体者が区役所・市役所・町村役場単位で、費用は先方の負担になっている。

林寮一氏

■講演 「危機管理対応情報共有技術による減災対策」プロジェクト紹介
  防災科学技術研究所 川崎ラボラトリー   鈴木猛康 氏

 自然災害や人為的災害発生時の危機管理に対応できる減災情報共有技術による減災に関するプロジェクトが紹介された。減災情報共有プラットフォーム、災害情報の標準化、空間データの整備方法、住民参加による情報収集・伝達技術、これらの情報の活用技術の開発状況などの説明がなされた。

鈴木猛康氏
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